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「精神文化と土着性」をテーマとして、平成20年度の年次大会を11月30日、三重県伊勢市の皇學館大学で開催しました。
前日夕刻の懇親会では、約50名の参加者が、講師の先生方を囲んで懇談し、様々な話題に花が咲きました。
翌日の大会では、約80名の参加がありました。午前の講演Tは、南山大学名誉教授のヤン・スィンゲドー先生による「キリスト教文化と土着性」。 スィンゲドー先生は、長年にわたる自身の日本滞在の体験に基づきつつ、普遍性を強調するキリスト教は、 これまで土着文化との関係を問題にしてこなかったが、近年のグローバル化にともなって、 異文化の影響を受けた「多文化的人間」が増加し、複雑なアイデンティティーを持つ「宗教多重帰属」が 見られるようになってきたことを指摘し、これは日本の重層的な信仰形態との類似などから、 西欧の東洋化ともいえるのではないかと述べられ、最後に多文化や多宗教の時代を生きるために 開かれた土着性を目指し、ダイナミックな性格を持つ文化的・宗教的アイデンティティーを発展させることが 我々の課題であると提言されました。
続いて講演Uは、九州大学教授の関一敏先生による「土着と外来−伝道のしくみ」。 関先生は、宗教の類型には、地縁や血縁と重なる「合致的宗教集団」と、地縁や血縁などの生活世界と離れた 「特化的宗教集団」の二種があるとされ、その「特化的」な西欧の宗教を基盤として憲法の政教分離規定ができているため、 法の理念と土着的な神道と間にねじれが生じ、違憲訴訟が頻発していると説かれました。 そして、新たな宗教類型として、キリスト教やイスラム教などの「預言者の宗教」、ヒンドゥー教などの 「神秘化の宗教」、東洋的な「賢者の宗教」の三つを示され、これにより宗教理念が現実に即したものになることを述べられました。
午後の部では、実践者報告として、まず大峯山寺護持院竹林院住職の福井良盟師が、 山伏装束に身を包み、大峯山での奥駆行の実際を紹介しながら、修験道の思想をわかりやすく説明して下さいました。
次いでチベット文化研究所の野口・リンジン・ドルマ・ギャリ女史が発表され、 現実生活に深く関わるチベット土着の「ボン教」と、来世での救いを説くチベット仏教の関係に触れ、独特の宗教事情について話されました。
なお、大会終了後は希望者による神宮内宮の御垣内参拝を行って解散となりました。